干しいも作りは、「畑づくり」から

春を迎える畑の準備

干しいもづくりは、冬が終わり春の気配を感じる頃から始まります。
まずは畑を丁寧に耕し、さつまいもが元気に育つための土づくりを行います。長い冬を越えた土は固くなっているため、何度も耕して空気を含ませ、柔らかく整えていきます。土づくりは目立たない作業ですが、その年の収穫を左右する大切な工程です。水はけや栄養の状態を確認しながら、さつまいもが根を伸ばしやすい環境を整えていきます。
畑にはまだ苗もありませんが、この時期からすでに干しいもづくりは始まっています。

畑の土づくり

小さな苗に込める一年の期待

春になると、種芋から育てた苗が少しずつ大きくなっていきます。 ハウスの中では毎日の温度や湿度を確認しながら管理を行い、丈夫で健康な苗を育てます。苗づくりは収穫の半年以上前から始まる作業であり、その後の生育に大きく関わります。太陽の光を浴びて伸びていく苗を見ながら、「今年はどんな芋になるだろう」と期待が膨らみます。
一本一本の小さな苗には、その年の収穫への願いが込められています。

ハウスで育つさつまいもの苗

畑いっぱいに広がる苗植えの季節

4月から5月にかけて、育てた苗を畑へ植え付けます。広い畑に並んだ畝へ一本ずつ苗を植えていく作業は、毎年の大仕事です。植えたばかりの頃は頼りなく見える苗も、土に根を張りながら少しずつ成長していきます。この頃の畑は、まだ緑も少なく静かな風景ですが、夏に向けて大きく変化していきます。
一本の苗から育つさつまいもを想像しながら、丁寧に植え付けを進めます。

畑への苗の植え付け

夏の日差しを浴びてぐんぐん成長

苗を植えたあとは、収穫まで長い生育期間が続きます。畑では雑草取りや病害虫対策などを行いながら、さつまいもの成長を見守ります。夏になると畑一面が青々とした葉で覆われ、春とはまったく違う景色になります。その年の天候によって生育状況は大きく変わります。雨が多い年もあれば暑さが厳しい年もあります。
自然と向き合いながら、毎日畑の状態を確認し、収穫の日を待ちます。

葉が広がった夏のさつまいも畑

収穫・保管は、「おいしさづくり」

秋の畑から、いよいよ収穫へ

秋になると、畑で育ったさつまいもを掘り上げる収穫の季節を迎えます。土の中から姿を現すさつまいもは、一つひとつ形や大きさが異なります。どれだけ立派に育っているかは掘り上げるまで分からないため、毎年この時期は楽しみでもあります。収穫したばかりのさつまいもは、まだ干しいもにするには早い状態です。
ここからさらに時間をかけて、甘さを育てる工程へ進んでいきます。

さつまいもの収穫

時間が育てる、さつまいもの甘さ

収穫したさつまいもは、すぐに加工せず一定期間保管します。温度や湿度を管理した保管庫で熟成させることで、芋のでんぷんが糖へと変化し、甘みが増していきます。見た目には大きな変化はありませんが、この時間こそが美味しい干しいもをつくる重要な工程です。ゆっくりと眠るように熟成したさつまいもは、やがて干しいもづくりに最適な状態へと変わっていきます。

さつまいもを熟成させる保管庫

おいしさを見極める選別作業

熟成を終えたさつまいもは、一つひとつ状態を確認しながら選別します。大きさや形、傷の有無などを見極め、その後丁寧に洗浄していきます。畑で育ったさつまいもには土が付いているため、表面を傷つけないよう慎重に洗い上げます。ここでの丁寧な作業が、後の仕上がりにもつながります。
干しいもづくりは、こうした地道な工程の積み重ねによって支えられています。

さつまいもの選別

いよいよ「干しいもづくり」へ

1・蒸す甘さを引き出す蒸し上げの時間

洗浄したさつまいもは、大きな蒸し釜でじっくりと蒸し上げます。中心までしっかり火を通すことで、さつまいも本来の甘さが引き出されます。蒸し上がった工場には、ほんのり甘い香りが広がります。蒸し時間は芋の状態によって調整しながら行います。
シンプルな工程ですが、仕上がりを左右する重要な作業のひとつです。

蒸し上げたさつまいも

2・皮むき熱いうちに、ひとつひとつ皮むき

蒸し上がったさつまいもは、温かいうちに皮をむきます。 柔らかくなった芋は崩れやすいため、力加減がとても重要です。経験を積んだ職人が、一つひとつ丁寧に作業を進めます。見た目以上に手間のかかる工程ですが、美しい干しいもに仕上げるためには欠かせません。
ここでも人の手仕事が活きています。

蒸したさつまいもの皮むき

3・スライスおいしく乾くためのスライス作業

皮をむいたさつまいもは、均一な厚さに切り分けます。厚すぎると乾燥しにくく、薄すぎると食感が損なわれてしまいます。そのため、仕上がりを考えながら丁寧にスライスしていきます。切り分けた断面からは、熟成によって育った鮮やかな色と甘みが感じられます。
いよいよ干しいもらしい姿が見えてくる工程です。

さつまいものスライス作業

4・並べるすだれ一面に並ぶ黄金色のさつまいも

スライスしたさつまいもは、すだれの上に一枚ずつ並べます。柔らかい状態のため、形が崩れないよう慎重な作業が求められます。作業場いっぱいに並んださつまいもは圧巻の光景です。
これから始まる天日干しに向けて、準備が整います。

すだれに並べたさつまいも

5・干す太陽と風が仕上げる天日干し

干しいもづくりのクライマックスが天日干しです。冬の澄んだ青空の下、すだれいっぱいに並んださつまいもを自然の力で乾燥させていきます。日中は太陽の光を浴び、夜は冷たい空気にさらされることで、少しずつ水分が抜けていきます。乾燥具合を見ながら並べ替えたり取り込んだりと、人の手による管理も欠かせません。
天気と向き合いながら仕上げていく、まさに自然との共同作業です。

天日干しで乾燥させるさつまいも

冬生まれの「ごちそう」が完成

こうして完成する天日干しの干しいも。春の土づくりから始まり、夏の成長、秋の収穫、冬の天日干しまで、およそ一年をかけて作られます。一枚の干しいもの中には、太陽の光、畑の土、季節の移ろい、そしてつくり手の手仕事が詰まっています。
自然の恵みをそのまま味わえる冬のごちそうとして、多くの人に親しまれています。

完成した干しいもを楽しむ子ども